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労災認定 トヨタ社員パワハラ自死

トヨタの技術系社員の方が、パワハラによる精神疾患を発症後、自死された事件が、労災認定されました。

自死という選択をされたご本人様の苦悩を想うと、大変つらく、心からご冥福をお祈りいたします。


この記事では、精神疾患に対する労災認定の仕組みについてご紹介します。

労災保険とは?

 

労災保険制度は、業務上または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度。その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用され、労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態によらずすべての労働者が対象となります。

精神疾患による労災認定状況は?

 

平成30年度の精神疾患による労災請求件数は1,820件で前年度比88件増となり、支給決定件数は465件となっています。

直近5年間の請求件数推移をみると、平成26年度1456件、平成27年度1515件、平成28年度1586件、平成29年度1732件と、増加の一途をたどっています。

業種大分類では、請求件数は「医療,福祉」320件、「製造業」302件、「卸売業,小売業」256件の順に多く、中分類では「社会保険・社会福祉・介護事業」が192件と最多。年齢別では、請求件数は「4049歳」597件、「3039歳」491件、「2029歳」332件の順に多くなっています。

精神疾患の労災認定基準は?

 

精神疾患による労災認定は、平成 2312月より「心理的負荷による精神障害の認定基準」(以下「認定基準」)に基づいて行われています。

 

認定基準に定められた要件は次の3点。

 

(1)認定基準の対象となる精神障害を発病していること

 

(2) 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

 

(3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

 

なお、心理的負荷の強度は、精神障害を発病した労働者がその出来事とその後の状況を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価されます。「同種の労働者」とは職種、職場における立場や職責、年齢、経験などが類似する人をいいます。

 

なお、発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限られ、仕事によるストレスが強かった場合でも、同時に私生活でのストレスが強かったり、その人の既往症やアルコール依存など(個体側要因)が関係している場合には、どれが発病の原因なのかを医学的に慎重に判断していくことになります。

 

(1)認定基準の対象となる精神障害とは?

 

ICD-10という疾病分類で規定されている精神疾患のうち、認知症、アルコールや薬物による障害を除いた疾病が対象となり、代表的なものはうつ病や統合失調症などがあります。

 

(2)業務による強い心理的負荷とは?

 

「業務による心理的負荷評価表」に基づき、心理的負荷の程度が「強」と評価された場合は、認定基準「業務による強い心理的負荷があった」に該当すると判定されます。

 

生死に関わる業務上のケガをした、ひどいパワハラやセクハラを受けた、1か月の残業が160時間を超えた、3週間で120時間以上の残業があった、などの場合は「特別な出来事」があったとされ、心理的負荷「強」となります。

 

特別な出来事がない場合、「業務による心理的負荷評価表」で示された具体例と比較して、どの程度の心理的負荷であったかを総合的に判定します。例えば、長時間労働に関する目安としては、発病直前2カ月連続して1月あたりおおむね120時間以上の残業があった、発病直前3ヵ月連続して1月あたりおおむね100時間以上の残業を行った場合などは、心理的負荷は「強」とされます。その他、転勤などその他の出来事の前後に、恒常的に月100時間程度の残業があった場合も「強」とされる場合があります。

 

また認定基準では、発病前おおむね6か月の間に起こった出来事について評価されますが、いじめやパワハラ、セクシュアルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、発病の6か月よりも前にそれが始まり発病まで継続していたときはそれが始まった時点からの心理的負荷を評価します。

 

まとめ

 

今回の事件では、ひどいパワハラを受けていたことが「特別な出来事」とされ、心理的負荷が「強」と判定されたのではないかと思われます。

 

労災認定されたことは一定の評価ができますが、そもそもこういう悲しい事件が起きない職場に変えていくべきではないでしょうか

 

 

ご一読ありがとうございました。